記憶力不足で議事録に苦しむ

私は記憶力に自信がありません。そういうわけで議事録作成には一番向かない人間です。と、悲しい自覚をしながらも、仕事の場面では弱音を吐いても決していい結果になりはしません。はいはい、分かってます。根性が足りないんですよね。(根性でどうにかなるならどうにかなってるわけですが)

ちょっと勇気がいるかも知れませんが、もう、そこは諦めてボイスレコーダーを使っちゃいましょう。私も最初は相手から敬遠されてしまうのではないかと心配でしたが、意外とそうでもありません。お客様相手でも、会議前に堂々とボイスレコーダーの使用可否を聞いてしまえばいいのです。

「この案件で議事録を書きますので、正確性のために録音させていただいていいでしょうか。」と交渉してみると、たいていは了承してもらえます。特に技術系の打ち合せだったりすると、型番だったり容量だったりの間違いが致命的になってくるので、双方のためになる提案だと思います。

この交渉は徹底しておいた方がいいです。最近のボイスレコーダーは、相手に隠れて録音できる性能もなくはありません。それでも、声質や声量によっては、さっぱり録音されないタイプの人がいます。堂々と話を通しておけば、声が小さい人のそばにボイスレコーダーを近づけて置くことができます。

それから、何も考えずにボイスレコーダーをそのまま使おうとすると、とても辛いことになるので、そこは工夫が必要です。未だに苦手ながらも、次のことに注意するようにしています。

  1. 少なくとも最初の会話については名前付きでメモをとる。
  2. 途中からは少なくとも話題となったキーワードだけメモをとる。
  3. 倍速機能があるレコーダーなら1.4倍あたりを設定する。
  4. 移動中に聞き流して「お話」として流れをつかむ。
  5. 録音内容から切り捨てていい部分を探す。
  6. 分からないところは分からないと注釈して先に進む。
  7. 初めての相手に議事録を出すときはやや粒度を粗めにする。

1ですが、ボイスレコーダーを聞いたときに、よほど慣れ親しんだ声でなければ、誰が話しているのか分からなくなります。発言内容と声質と声の主を結びつけるヒントを最初に作っておかないと、必ず後から苦労します。

ちなみに、どうしても分からなくなったら「(発言者不明)」とでも書いておいて、後で議事録を読んでくれた人にコメントをお願いするのも選択のひとつです。どれだけ考えたって蘇らない記憶に時間をかけるのは無駄です。

2は意外と重要な点です。少なくとも私にとっては。最初の内、全てを記録しようとして必死で全ての言葉をメモろうとがんばっていました。まあ無理です。PCでタッチタイプができれば、それなりに記録できるでしょうが、あるスピードを超えると入力することに集中力を使ってしまいます。

つまり、何が言いたいのかというと、「言葉を記録」することはできても、「言葉を聞く」「言葉を理解する」という余裕はなくなってしまうわけです。言葉を理解できなくなると、当然、記憶に残らなくなってきます。また、疑問があっても聞けない、いや、疑問が発生する余地すらありません。

難しいポイントかも知れませんが、極力、メモする内容を少なくするのがコツです。たとえば昔話の「桃太郎」を聞いたとしたら、次のようにメモります。

川で桃 赤ちゃん 成長 青年 きびだんご イヌ キジ サル 鬼 退治

……という感じ。いや、実際にはもっと少なくてもいいと思います。なぜかと言えば、これは記憶にインデックスをつける作業だからです。前述したように、発言内容を全て記録しようとすると、むしろ記憶からは流れてしまいます。そこで記憶に「しおり」を挟む程度のメモにするのです。

3ですが、ボイスレコーダーに倍速機能があったら積極的に使うべきです。逆に、議事録用にボイスレコーダーを買うなら、必ず事前に確認しておいた方がいいポイントです。仮に1.5倍速なら、60分の内容を45分で聞けることになります。

そんなの無理だろう……と、私も思っていたのですが、会議特有の事情によって心配はいりません。早回しすると分かるのですが、会議中の音声には無駄がたくさんあります。「えー、それについてはですねー」「ぱら、ぱら……(資料をめくる音)」「どこだったかなー」など。

もっとも、論理的には60分の内容を45分で聞けるにしても、文字起こし(発言をすべて文章化する)をすると、「再生して」「聞いて」「止めて」「確認して」「入力して」という繰り返しが発生し、思った以上に時間がかかります。よく聞くのは「文字起こしは収録時間の4倍」かかるらしいです。

なので、それをやらない工夫が必要になります。4の移動中に会議内容を再生して聞くのはそのために行うことです。これをすると効率が上がります。歩行中にメモはなかなかとれませんので、むしろ気楽に物語として聞く感じです。どんな気持ちでどんなテンションなのか。反対しているのか賛成しているのか。

ボイスレコーダーを使い始めてから、いろいろと試行錯誤してきましたが、会議の発言には結論までの回り道が非常に多い実感があります。昔話の桃太郎のようにスマートではありません。イヌを味方にしてキジを仲間に入れたら揉めてイヌが脱退を考えた……のような回り道も珍しくありません。

結論としては、「イヌを味方にして、キジを味方にして、サルを追加して鬼退治した」のです。その間にどんな紆余曲折があろうが関係ないのです。だから、ボイスレコーダーを聴きつつ書き進めていくのは無駄なのです。ある程度書いてから「この話は全部無駄だった」ということはよくあります。

これが5の不要点の切り捨てに繋がります。つまり、移動中に聞いた内容を、後で聞き返して文字にする時、すこし聞いただけで「ああ、これはあとで不要だという話になるから書かないでおこう」という判断ができ、さらに数秒ほど先飛ばしができるようになります。「聞いて」「書いて」「消して」という無駄がなくなります。

そして重要だと思うのが、6の「分からないことに時間をかけない」ということ。不幸なことに会議内容がさっぱり分からない場合、文字起こしに近いことをせざるを得ないこともあります。しかし、時間をかけて無理をしても文章が支離滅裂になっていたり、意味をなさないことも珍しくないです。

こういう場合、実は白旗を揚げるのが正解です。たとえ責任者に怒られようが、残念ながらそれが正解です。適当に書けそうなところだけをつまみ食いして書く。自分以上に理解している人が修正することを前提にして、ざっくりとしたものを最速で書き上げて渡すのが正解です。

それはなぜか。逆のことが起きると不幸な人が増えるからです。(1)時間をかけた割に意味をなしておらず失望を招く。(2)時間をかけたぶんだけ修正時間に余裕がない&修正ボリュームが大きいので校閲者がしんどい。(3)議事録の提出時期が遅くなり読む側も余裕がなくなる。

極端なことを書けば、ロシア語の分からない人がロシア語の会議に参加したとして、内容は一切理解できないでしょう。そもそもなんと書いていいのか分からず、すべてカタカナで書くしかない。そしてカタカナで書かれたロシア語は意味不明。つまり、無理解が引き起こす結果はその程度です。

最速で……というところも重要なポイントです。一般的に時間の経過にはバイアスがかかります。「これだけ時間をかけたのだからまともなものができるだろう。」「これだけ時間をかけたのだからこんな完成度では提出しづらい。」という心理です。分からなければ分からないほど早くしたほうがよいのです。

そして、最後に7です。初めて議事録を提出する相手の場合には、できるだけざっくりと大雑把に書いた方がいいです。どうせボイスレコーダーがあるのです。後から聞き直すことができます。むしろ提出する側される側の双方がガッカリするパターンがあります。

「ええ?こんなに時間をかけなくてもよかったのに。」「相手もお忙しいし読むのが大変だろうから削ってください。」というのはお互いにキツいものがあります。最速で作っておいて、詳細を求められるならば、詳細化をお願いされたわけなので、時間を使っていいのです。

しかし、苦労した挙げ句、かけた時間は無駄だと言われ、削るためにさらに時間を使う。こんな残念で無駄なことはありません。議事録作成はよくよく注意してかからないと、あっという間に無駄なことに膨大な時間がかかってしまいます。

ただ、議事録作成は苦手にしている人も潜在的に多いので、自ら進んで議事録担当になると喜んでもらえることは割と多いです。また、苦手であっても、それなりに本気で考えれば「無駄を省く技術」として得られるものも多いものです。やって損はないので機会があるなら積極的にやりましょう。

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