仕事を早くするための最適解

勉強熱心なだけではタイムロス

努力してしまう系の人は気をつけたいのが、自己解決をしたくなってしまうこと。自己解決はとても大切な素養だし、その方法は熟知しておくべき……なのですが、それだけに選択肢を絞ってしまうとタイムロスに繋がるリスクが高いです。

たとえば、ある機械を操作している時に異臭がしてきたとします。ここで自己解決をしたくなる人は、マニュアルを読むかも知れませんし、技術サイトを読むかも知れません。運がよければ一発でその原因を見つけられるかもしれませんが、似ているけれど違うトラブル事例がたくさんあったとしたら?

そうこうしている内に異臭はどんどんひどくなり、ついには機械が燃えてしまうかも知れません。ここでの正解は「知っていそうな人に聞く」ということでした。自己解決は大事なことですが、そこに明示的にでも、暗黙的にでも制限時間があるのなら聞く方が早いです。

 

誰がどの情報を持っているか

ただ、誰に聞けばよいかというのは、それはそれで苦労するかも知れません。手がかりがなければ、片っ端から話のしやすそうな人に声をかけてみるしかありません。すこしでも近づけそうな人の情報を集めるしかありません。組織であればエライ人にエスカレーションしていくのも有効です。

そして、人によって取り扱いが得意な情報は異なるものです。それは人脈の傾向であったり、得意な領域の傾向であったりと理由は様々ですが、人によって情報の収集傾向や更新頻度、正確性がまちまちです。詳しい分野とそうでない分野では情報の粒度に差が出ます。

なので、誰がどのような情報に強いかというマップを持っておくといいかもしれません。そういう意味でも「職場に無駄な人なんていない」という理屈が成立するかも知れません。歴史的な経緯に詳しい人、技術的に詳しい人、内部の力関係など政治的な情報に長けている人もいるでしょう。

 

自分が提供できる価値は何か

すごい人の力はたとえ数秒であっても絶大な威力を持っていることは珍しくありません。たとえば、数秒の電話ですごい有力者を味方に付けてくれることもあります。数秒でもまさに必要としていた技術情報を提供してくれることもあります。それ自体がその人の力です。

とはいえ、冒頭の例のようにリスクが高そうな内容であればともかく、自分の仕事を効率化するために人に頼る場合は、これがまたなかなか難しいことでもあります。なぜなら、みんなそれなりに忙しいからです。誰かを助けるには時間がかかり、その時間で自分が苦しむことはよくあることです。

いやらしい話になってしまうかもしれませんが、自分を助けることで「見返りを期待される」ような部分も意識することは非常に大事な要素だと考えています。本当に忙しくてどうにもならないような時であっても、「あの人になら数秒くらいは協力しよう」という気持ちになってもらうことは重要です。

 

総合的な力を蓄えるとは

昔、知識とスキルさえあればなんとかなるのだろう……と思っていた時期がありました。もちろん要素としては大事な部分なのですが、どうやらそうではないらしいと気づいたのはだいぶ後のことです。総合的な力とは「自分のキャラ」を活かすこと以外にないだろうというのが、現時点での結論です。

簡単に難しいことを書いていることは百も承知です。ただ、知識を持っている人というのは世の中にたくさんいるのです。技術を持っている人も世の中にはたくさんいます。何か特別な知識を身につけたら世の中から飛び抜けたのか……というとそうではありません。そういう人はたくさんいます。

結局のところ、好き嫌いで人は繋がっています。価値観、趣味、方向性、反応、性格……。そしてこれらは、自分が望まない特定方向に伸ばすことは難しいし、伸ばしたところで万人に受け入れられるものでは決してありません。そういう部分が「相性」として表出するわけです。

 

違いを生み出すのはアウトプット

「価値観、趣味、方向性、反応、性格……そんなつかみどころのない自分のキャラなんて、どうやって活用するんだよ!?」と思うでしょう。私もそう思います。正直なところ、自分をアピールするといっても、方向性を間違えば悪影響を呼び込むことも珍しくはありません。

私なりに考えて検証してきた結論から書きますが、実は無理に自己アピールをする必要はないと思います。ただし、その代わりにすべきことはアウトプットをとにかく多くすることです。どのように考えて、どのようにしたいのか。今後はどのような方向性を考えているのか。

アウトプットとは、仕事なら報告書という形でもあるでしょうし、仕様書という形もあるかも知れません。提案書かも知れませんが、いずれにせよ自分の所見として何かを書かなくても、必ずそこに「思想=キャラ」は入り込みます。無機的に見える仕様書にすら設計思想が入り込むのです。

 

アウトプットは得意なもので

アウトプットを増やすといえば、「じゃあ、死ぬほど書かなきゃいけないのか。文章力がない俺、終了じゃん!」という人もいるかも知れません。そういう意味では私だって終了じゃないですか。しかし、アウトプットに必ずしも文章力が必要だとはあまり思っていません。

フルート奏者やピアノ演奏家に最も必要なことは文章力ではありません。私は楽器に詳しくないし、それ以前に音楽に詳しくないのでよく分かりませんが、おそらく表現力という部分が重要になるのではないでしょうか。音楽家は演奏すること自体がアウトプットになるのだと思います。

書くことが苦手だったとしても、人と会話することはとても得意な人もいます。それも有効なアウトプットと言えます。特に読むことが苦手な人、時間のない人にとってはそちらの方が都合がいい人もいいでしょう。アウトプットを一つに絞るという発想は自分の可能性を狭めるだけです。

 

つまりキャラを活かすということは

結論から書くと、「自分が好きなことってなんだろう?」を一生懸命追求することじゃないですかね。生きている限り好きなことはあると思います。音楽を聴くのが好き。人と話をするのが好き。考え事をしているのが好き。ゲームをしているのが好き。何かを読んでいるのが好き。何かを作るのが好き。

ゲームをしているのが好き……なんて書くと、一昔前は「ゲームなんかで飯が食えるか!?」なんて説教をする時代もありましたが、今ではゲーム関連のブロガーとして生計を立てる人もいれば、文章を書かなくてもYoutubeなどで動画を作って生計を立てる人も出てきているようです。

ブログだけでなく、報告書、提案書……など、「書」のつく成果物を作ることも自分のキャラを活かすことに繋がります。文章の練り込み、デザイン、シナリオ展開、図解など、そこにはやはりキャラが介在するのです。そういう意識でアウトプットを心がけて生活するといいんじゃないでしょうか。

生き延びるための武器を磨く

能力に自信がなくても勝つために!

私が生きている中で最もわくわくするのは「効率化」を考えることです。むしろ、私が「効率化」なしでは生きていけないほど不器用であることも深く関係しています。効率化を考えることは私にとって生きることそのものです。効率化がなければ労働力としての価値はないといっても過言ではありません。

不器用な人間が効率的であるためには、思考の繰り返しを極力避けることが必要になります。なぜなら、毎回、思考力を試される局面を乗り切るためには、低コストで高速な思考力が求められるからです。いわゆる頭の回転が速く、要領よく物事を処理できるようなタイプしか乗り切れません。

はっきり書いておきますが、私は頭の回転は速くありませんし、要領のよいタイプの人間ではありません。だから、負けたままにしておくのかといえば、そうではありません。私のように頭の回転力が早くない人間には、早くない人間なりの戦略を立てる必要があるのです。

 

武器を作るための才能とは!

武器とはなんでしょうか。古代においては棍棒、ナイフ、剣。近代においては銃、戦車、軍艦、戦闘機、ミサイル……など様々なものがあります。少なくともよほどのスキルに差がない限り、武器を持った人を相手に素手で勝つことは困難です。(もっとも「戦闘スキル」自体も「武器」といえるでしょう)

このように武器があることが大きなアドバンテージになるわけですが、武器には共通の課題があります。それは事前に準備しておかなければならないことです。目の前に敵が迫ってからミサイルを用意することは不可能です。ナイフですら作る時間を与えてはくれないでしょう。

また、武器を作るためには戦闘技術以外の知識とセンスが必要になります。実際の戦闘で必要ではない技術が必要になることも多くなるでしょう。素早さよりも洞察力や観察力が問われます。つまり、頭の回転が決して速くなくとも、それを補うほどの深く丁寧な思考力があればよいということです。

 

効率化はパターンを分析すること!

「武器」という軸で「効率化」を考えると、過去の戦いの分析によるパターン化は避けて通れないはずです。特に「なぜ負けているか」という分析が正しくできなければ効果的な武器を作ることはできません。たとえば「弓矢」という武器を生まれるまでの思考を追えば明らかです。

過去の戦いで接近戦に持ち込まれたら無敵の強さを誇る敵がいるのであれば、今後も接近戦で負け続ける可能性は限りなく高い。接近戦のスキルを高めることができるにせよ、それまでに多くの戦力を失うことでしょう。特にマイナススキルを上げるには多くのコストが必要になります。

この場合「接近戦では負ける」という敗因パターン分析結果を元に「接近戦に持ち込ませない」ための手法を考えることが重要です。そのために、接近戦に持ち込ませる前に敵戦力に致命的なダメージを与えるための「弓矢」が必要になってくるのです。

 

自分自身を信じる戦いの先に!

この武器を扱うにおいて、気をつけるべきポイントがあります。それは味方の声に惑わされないことです。もしかすると「弓矢」を使うことに対して、接近戦に自信のある同僚から「努力不足だ」「卑怯だ」「間違っている」という言葉が浴びせかけられるかもしれません。しかし貫くことです。

武器を持ったことの意味をよく考えてみてください。そのままでは勝てないから、すこしでも勝率を上げるために武器を手にしたのです。ここですべきことは同僚の声に負け武器を捨ててマイナスの努力をすることではなく、手にした武器を誰にもまねできないほどまで使いこなすための修練です。

たとえば職場で「君の考えは分かるけど、それは間違っている。」という声を受けたとしても、もし、自分自身の中で納得感がないのであれば絶対に考えを曲げるべきではありません。武器を捨てて失敗してしまったとしても、その責任を取るのは武器を捨ててしまった自分自身です。

 

臥薪嘗胆を恐れるな!

自動車が世界で初めて発明された時、その時代の多くの人は自動車を馬鹿にしたといいます。なぜなら、人が簡単に歩ける10メートルの距離を、時間と燃料を書けて僅かなスピードで前進するのが精一杯だったからです。「それなら歩いた方が早い」と馬鹿にした人の方が多かった。

効率化はこのように、時代や価値観が追いつけない時期にじっと堪え忍ぶ必要があります。自分が生き残るための武器(アイデア)を快く思わない人がいることもあります。しかし、その芽を決して自分から捨てないことが何よりも重要です。この世の批判から守ってあげる必要があります。

もしかすると、その効率化アイデアを活かす場所は今の職場ではないのかも知れません。何より大切なことは効率化アイデアを守り育てることです。自分が生き残るための武器を簡単に捨てないことです。武器の有用性を信じるのであれば、その武器の価値が分かる人に出会えるまで磨ききることです。